Column | 豊かさを彩るフォレストガーデン |
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2024.08.01
昭和、平成、令和と時代は遷移してきました。
1990年代後半〜2010年代前半に生まれた、いわゆる「Z世代」の方々も、家づくりをスタートしている時期です。
家づくりは、その時代の価値観や社会環境を反映したものでもありますから、建築時期によってそれぞれ特徴が出てくるものです。
今回は時とともに変化してきた家づくりについて深掘りしてみたいと思います。
昭和時代(1926年〜1989年)は、戦後の復興とともに住宅需要が急増した時代です。
この時代の間取りは、主に伝統的な和風住宅の影響を受けており、畳の部屋やふすま、障子が一般的でした。
また、大家族が一緒に暮らすことが多かったため、広いリビングやダイニング、複数の寝室が特徴的です。
サザエさんで見られるような一家団欒のシーンは、昭和のイメージを反映していますね。特にリビングにおいて、その中心的な存在は「テレビ」でしょう。家族で集まって一つの番組を見るのが、日常的なリビングの役割にもなっていたように思います。
「居間」と「食堂」のように、食べる場所がまったく別の部屋というケースも多く見られましたね。
また、「収納」という概念もなく、基本的に「納戸」という空間にさまざまなものを一緒くたに置いておくのが普通でした。
平成(1989年〜2019年)になると、ライフスタイルの多様化が進み、住宅の間取りにも変化が現れました。
特にバブル経済の影響を受けた平成初期には、豪華で広々とした間取りが流行。「LDK」という概念が生まれたのも、この頃だったと思います。
核家族化によって居住人数も減っていくと同時に、プライバシーの概念から個室化が進み、一人一室程度の部屋を保有するスタイルが一般的になっていきます。
安価な家具材や 新建材の利用とともに、それらに使われていた接着剤に含まれる成分が原因となってシックハウス症候群が問題となったのもこの頃。住宅の24時間換気が義務化されたのは平成中頃のことです。
令和(2019年〜)に入って、もっとも大きなインパクトがあったのは、やはりコロナ禍でしょう。
在宅勤務の普及によって、自宅にワークスペースを設けたり、三密を避けるためのオープンな空間が求められるようになったのも記憶に新しいですね。また換気や手洗いの重要性も再認識されました。
物価やエネルギーの高騰などによってコストパフォーマンスの高い住宅が求められるようになっています。スマートホーム、IoT、HEMSなどのデジタル化もそれを後押ししているでしょう。
新聞や雑誌など既存のメディアに頼らず、YouTubeなどで住宅事業者が直接情報発信できるようになったのも大きな変化といえます。
家づくりを検討されている方々が、手に入れられる情報の量や質は、それ以前の時代と比べると圧倒的に高まっています。
では、今後家を建てる「Z世代」の方々は、どのような傾向があるのでしょうか?
お話をしていて思うのは「環境に配慮する意識」や「家族やコミュニティへの想いの強さ」でしょうか。サステナビリティやワークライフバランスが一つのキーワードとも言えそうです。
また、日本人的な奥ゆかしさも持ちつつ、きちんと自分の意見を持っていて自己主張もでき、相手の話も聞いたうえで議論することに慣れているといったところが「Z世代」の方々に対して持つ印象です。
様々な記事や資料を閲読した上での私見ですが、この世代の方々の住まいづくりには以下のような要素が含まれていくでしょう。
Z世代は、環境問題に対する意識が非常に高いです。
地球環境に優しい素材や、エネルギー効率の高い設備。断熱性や気密性に優れた高性能住宅に加えて、太陽光パネルや高効率の換気設備などに興味を示す方も多いように思います。
木材や漆喰のような長持ちで持続可能な素材を内装や家具に使用することを要望されるご家族もいらっしゃるでしょう。自分たちが地球環境に対してどう貢献できるか? を考えている方も増えているように感じます。
デジタルネイティブとして育ったZ世代にとって、テクノロジーに裏打ちされた「スマートホーム」も当たり前のものになっていくはず。
スマートフォンで操作できる照明、セキュリティシステム、温度管理システムなど、最新の技術を駆使して快適な生活を追求する方は、今もX(旧Twitter)などでお見かけします。
Z世代に限らずですが、現代人は忙しいライフスタイルを送っているもの。音声アシスタントなどを使って効率的で便利な暮らしを求める流れは、今後より一層加速していくでしょう。
これまでの家づくりでは、設計者も含めて多くの方が「いま」を意識して間取りや設備を考えていました。
しかし、人生100年と言われる時代や、スクラップ&ビルドの風潮の見直しなどから、住まいに対しても、先々まで使える柔軟性が求められています。
例えばよくある失敗として「使い途のない子ども部屋」があります。家を建てる時には小さかったお子さまも、十数年後経てば独り立ちして、ご両親とは別居となるケースも多いもの。
壁を取り払えばリビングなどの共用部を拡張できるようにしておいたり、フリースペースとして使いやすい場所に配置しておいたりと、計画段階で先々のことも見越して設計しておくべきなのですが、その必要性が理解され始めたのもつい最近のことのように思います。
他にも、モジュール家具や可動式の間仕切りなど、ライフスタイルに合わせて変えられる間取りやスペースが最近では求められています。
先に述べたように、家族やその他のコミュニティを大切にするのがZ世代。
社会生活上も、コワーキングスペースやシェアの概念も当たり前のものとして考えられていますし、住宅においても共有の庭や駐車場といった事例が増えてきています。
自分だけがよければいい、という意識はなく、家を建てる際も、周辺環境や地域の住民に配慮した住まいにしたい、という気持ちを持っている方も多くなってきました。
と、ここまで「Z世代」に区切って文章を書いてきましたが、実際には、該当する世代の方々が明確に上記のような特徴を持っているとは限りません。
時代背景から来る「傾向」はあれど、育った環境はそれぞれ異なりますし、外的要因の影響や、生来の性格というものもあります。
家づくりを行う際にも、このようなカテゴライズを鵜呑みにせず、ひとりの人間として「どういう人なのか」ということを、住まい手とつくり手双方が、お互いに見極めていくことが大切だと考えます。
建築従事者としても、引き続きお施主さまに寄り添ってプランしていく所存です。
P.S.
人と人の相性もそうですが、家づくりは当然、その会社が建てている住まいがあなたにとって「しっくりくるか」というのがとても重要。
私たちマルベリーハウスの家づくりを体感いただけるモデルハウスもありますから、こちらもぜひ足をお運びくださいね。
https://kuwabara-kensetsu.com/modelhouse/
マルベリーハウス
桑原 人彦