Column | 豊かさを彩るフォレストガーデン |
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2024.10.29
家づくりを考える際、基礎工事は最も重要な工程の一つです。
基礎工事は、家全体を支える、文字通り「基礎」。耐震性や耐久性、生涯安心して暮らすための住環境に大きく影響します。
でも、家づくりのことを知らない一般の方が見ても、何がよくて、何がダメなのか、なかなか理解するのは難しいですよね。
そこで今回は、基礎工事における注意点やチェックポイントを画像付きでわかりやすく解説します。
私たちマルベリーハウスは現場での施工精度や品質についても、かなりこだわりを持って家づくりを行っています。
基礎工事においても「ほとんどの住宅会社がやっていないけれど絶対にやった方がいいこと」も手間をかけて実施しています。
少しマニアックですが、一度建てたら二度と変えられない重要な「基礎」のこと。家づくりをスタートする前に、ぜひ参考にしてください。
基礎工事の前に、まず重要なのが下準備。コンクリートを設置させる「地面」をきちんと締めて固めなければ、いくら強固な基礎を作ったところで意味がありません。
鉄筋を組んだ時、地面が柔らかければ鉄筋は自重で沈んでしまいますし、鉄筋が地面に近づいてしまえば、必要なだけの「被り厚さ」を確保することができません。簡単に言えば、基礎の寿命が縮んでしまうことになるのです。
そこで必要なのが上の画像の「ランマー」。土壌を締め固めたり、平らにならしたりする締固め用の機械で、装置本体の重さと盤面の上下運動による衝撃で地面を突き固めます。
しかしこの機械、重いし面積は小さいしで、地面全面を締め固めるのは非常に大変です。それを敬遠して、プレーナーという機械を使うケースが多いのですが、これは整地しているだけで、地面を締め固めているわけではありません。
プレーナーというのは、こういうものです。アスファルトをならすのに使われていたりしますよね。
いずれにしても、基礎工事に着手する前に、ガッチリと足元を固める必要があるわけですね。意外と知らない方が多いポイントなので、まずはこちらを要チェックです。
ちなみに、下の画像で溝になっている部分は「地中梁」を通す場所。許容応力度計算で構造計算を行うと「強くしなければいけない場所」が正確に分かります。きちんと構造計算してもらいましょう。
締め固めた平滑な地面に「捨てコンクリート」というコンクリートを流し込みます。これは強度を求めるものではなく、「墨出し」の下地として使って基準線を明確にしたり、高さ0mmという基準位置にしたりします。
しかし、そのままコンクリートを流してしまうと、地面からの湿気が捨てコンクリートを通って上がってきてしまいます。地面は無尽蔵に湿気を供給しますから、防湿シートで覆って、未然に地面からの湿気の移動を防ぐ必要があります。
上の青いシートが防湿シート。よくあるブルーシートにも見えますが、まったく別のものです。
現在の日本の法律では、基礎工事へのチェックはほとんどありません。(3階建ての場合は基礎配筋検査を行いますが)
基準もゆるく、設計図通りに基礎が施工されているか、ということすら、公的機関でチェックされないのが現状です。要は施工会社の現場管理任せということです。
しかし、最初に述べたように基礎は地震などの災害に対して最も重要な部分ですし、設計者も施工者も人間ですから、本来、ミスがある前提で考えなければいけません。
マルベリーハウスの場合は公的制度である「住宅性能評価」で設計・施工の第三者評価をしてもらっていますし、更に民間の検査会社にも依頼して、住宅性能評価ではチェックされない部分もチェックしてもらっています。
自社でのチェックは当然ですが、第三者によるダブルチェック、トリプルチェックが当たり前という意識が必要です。
そうして、見た目にも美しく、きちんと強度を持った配筋が実現するわけです。
配筋された部分にコンクリートを流して、鉄筋とコンクリートの組み合わせで引っ張る力と押し潰す力の両方に耐えるようにしていくのですが、配筋同様、コンクリートの強度もきちんと力を発揮できるか確かめることが大切です。
コンクリートは、水分が抜けていくと同時に強くなっていきますから、
・配合が設計強度に準拠しているか
・後日、ちゃんと強度が出ているか
工事の際、これらを明確にしておく必要があります。
この写真は、土間コンクリートを流し込む際に取得したサンプルや、配合の記録。
「33-18-20N」と書いてあるのが、実際の配合ですね。
33はコンクリートの呼び強度。N/mm²(メガパスカルと同様)で表され、コンクリートが硬化する28日後に期待される圧縮強度です。
18はスランプ値。単位はcm(センチメートル)で、スランプ試験によって18cm下がるよ、ということを示しています。
最後に、20というのは骨材の最大寸法、Nはセメントの種類を表しています。
マルベリーハウスの33Nという呼び強度について言うと、30Nで長期100年、36Nで超長期200年という耐用年数ですから、次の世代に安心して引き継げるレベルです。
ちなみに、設計上の強度である設計基準強度は、マルベリーハウスの場合は24Nです。実際に打設する際には、それよりも高い強度(呼び強度)で施工するので、計算よりもさらに強固な基礎が出来上がるというわけです。
ただし、呼び強度自体も、その時点ではまだ机上のもの。実際にその強度が出ているかは、試験をしてみなければわかりません。
写真右手に見えるテストピースは、それぞれ3日後、1週間後、4週間後に圧縮試験を行い、硬化して適正な強度が出ているかを計測するためのものです。
また、スランプ試験は、スランプコーンというバケツのような入れ物にコンクリートを流し込み、それを容器だけ引き上げてコンクリートの頂点がどれくらい沈んでいくかを測る試験。写真の中央やや左、やや形が崩れたコンクリートがそれです。
ちなみにスランプ試験は、コンクリートの「ワーカビリティ(施工性)」、すなわち、コンクリートがどれだけ流動的で、型枠に流し込んだり、打設したりする際にどれほど作業しやすいかを評価するために実施されます。
適切な流動性を確保することで、コンクリートの品質や施工の効率性を高めることができます。硬すぎると鉄筋の間にコンクリートが流れ込みづらく、逆に柔らかすぎると強度に影響が出ます。適切な硬さがあるわけです。
これらの試験、工務店レベルでは、おそらく面倒くさくてここまでやらない会社がほとんどではないかと思います。普通、生コン会社に一任してしまうものなのですね。
基礎工事の施工業者さんを信用しないわけではありませんが、お客さまに対してあらゆる責任を負うべき工務店として、強度や精度の確認は必須だと私たちは考えています。
基本的に、日本の住まいは大半が木造による構造体。ですから、基礎コンクリートと木構造をしっかり繋げなければいけません。
もしその接続が甘いと、大地震の際、基礎コンクリートの上に乗っている木構造だけがこてんと倒れてしまったり、基礎から外れてしまう可能性があります。
私自身も、2016年に起きた熊本地震後に現地を訪問し、基礎と構造が破断している建物をたくさん見ました。
基礎と木構造を繋ぐ役割を果たすのが、基礎に埋め込まれ、柱に結着されるアンカーボルト。鉄筋と結束し、コンクリートを流し込んで固定します。
建築基準法では、「アンカーボルトの間隔をいくつにしなさい」と明確には記載されておりません。住宅金融支援機構の仕様では「2700mm以内」となっていて、一般的にも、柱から200mm以内にアンカーボルトを用意すればOKということになっていますが、これでは地震時の引き抜きに耐えられる量になるかは定かではありません。
マルベリーハウスでは許容応力度計算に基づいて耐力壁の両側にアンカーボルトを施工し、必要な強度を担保しています。
アンカーボルトの位置、出寸法も、第三者検査を入れて自社・公的機関・民間機関でトリプルチェック。それぞれの立場から施工のクオリティ向上を目指します。
ちなみに、アンカーボルトの位置にも細かい配慮が必要です。木構造の土台は、プレカットの機械の都合上、材料の長さに限界があるため、必ず「継ぎ手」の部分が出てきます。
そのら接続部分にアンカーボルトが被ってしまうと、土台の継ぎ手が弱くなってしまいます。設計時に、土台の継ぎ手の場所も分かるよう、寸法を出しておく必要があるわけです。
土間コンクリートを流し込んだ数日後に、立ち上がり部分にもコンクリートを流し込みます。一回で立ち上がりまで成形する「一体打ち」という手法もありますが、マルベリーハウスは「二度打ち」。
さっきも出てきた画像に似ていますが、これはまた別の日のもの。
土間とは別日にあらためてコンクリートを打設するわけですから、あらためて強度試験を行うべきですよね。
ちなみにコンクリート強度試験、工務店は実施経験が少ないと前述しましたが、ハウスメーカーは測っている会社がそれなりに多い印象。さすがに、平均以上のことはやっているなと感じます。
二度打ちの場合、型枠なども含めて丁寧に施工しないと、土間コンクリートとの打ち継ぎ部分がガタついてしまったり、ボソボソになってしまいます。
この打ち上がりの素晴らしさがわかりますでしょうか? もしあなたのご近所に基礎工事をしている建物があれば、ぜひチェックしていただきたいポイントです。
下の写真は、とある建売住宅の基礎。打ち継ぎ部分がいかに粗雑な仕上がりか。これでは、設計時に期待されている強度や耐久性は発揮されないでしょう。
よくよく、注意していただければと思います。
型枠を組んでコンクリートを流す前、そして打設した後。建物の両方の対角の長さや、基礎の天端の水平を私たちは自社で測定しています。
基礎屋さん任せになっている会社も多いものですが、これらの結果はきちんと自社でチェック。
精度を高めなければ、それ以降の工事すべてに影響が出てしまう部分です。特に水平は、最近は根太レス工法が多いため、基礎の水平のズレは、床にも直接影響してきます。(昔のように根太があれば調整ができるものなのです)
いずれにしても、マルベリーハウスは誤差1mm程度のレベルまで、正確な施工を心がけています。
何度も言ってしまいますが、基礎工事はその名の通り、「基礎」。
一度家を建ててしまえば、スケルトンにしてもやり直すことはできず、かつ建物の耐震性や耐久性、暮らしやすさにも大きく影響してきます。
家づくりにおいて、最も分かりづらく、最も重要な部位と言っても過言ではないでしょう。
これらの施工精度は、細かすぎてお客さまにはなかなか伝わらないものですが、それでも決して手を抜いてはいけない部分。
ぜひ、基礎の設計施工にこだわりを持つ住宅会社を選ぶようにしてください。
マルベリーハウス
桑原 人彦