Column 豊かさを彩るフォレストガーデン

2021.01.04

コロナ禍で増えた「建築難民」の方々へ

コロナ禍で増えた「建築難民」の方々へ

あけましておめでとうございます。
マルベリーハウス 代表の桑原です。

 

昨年は、よくも悪くもコロナウイルスに振り回された一年でしたね。

 

外出自粛による経済停滞で日本だけではなく世界中の国々が大きなダメージを受けましたし、いまだにウィズコロナの正しいあり方を模索しているように思います。

 

一方で、リモートワークやオンライン会議の普及によって、ホームオフィス(SOHO)の効率のよさが見直されたり、「おうち時間」を楽しむために住まいそのものが見直されてきたり、コロナ禍だからこそ生まれたトレンドもありました。

 

住宅業界で言えば、建築系YouTuberと言われる方々が自らのノウハウを無料で提供してくださるようになりました。

 

私たちもYouTubeでの情報発信をしていますが、実際にそのおかげで、弊社に来てくださるお客さまとの家づくりもずいぶんスムーズになったように感じています。YouTubeを見ればいくらでも家づくりの勉強ができるため、ある程度の知識を持った状態でこちらに来てくださるので、私たちとしても話が早いのです。

 

一方で、

 

「たくさんの会社を見たけど、決められない…」

 

こんなふうにおっしゃる方も増えてしまったように思います。きっと、現状がお客さまにとって明らかに『情報過多』だからでしょう。

 

情報が氾濫している時代に、どうやって家づくりを進めていくべきか

 

YouTubeをはじめとして、家づくりに関する情報がコロナ禍を経て一挙に増えました。多くの住宅会社が発信する情報に触れられるようになり、住宅を建築するための情報を、お客さま自身がこれまで以上に取得できるようになった反面、例えば「A社が勧めている仕様や設備とB社が勧めている仕様や設備が正反対」「自分が仕入れた情報とは異なる素材を勧めてくる住宅会社がいた」など、悩ましい事例に遭遇することも同時に増えてきたのでしょう。

 

知識を得て、いろいろな会社に行き、見学会にも参加して、あれもいいし、これもいい。いろいろな会社が「自社の仕様が一番正しい!」とそれぞれ言うものだから、迷う。だから結局、何が良いのか分からず、施工会社を決められない。『建築難民』とそう呼べる状態の方たちが増えていることを実感しています。

 

もちろん知識を得ること自体は悪いことではないのですが、個人的には「各論に偏っているな」と、少し残念に感じています。

 

たとえば、「どれがいい、●●の種類」などといった動画で語られる、換気手法や断熱材の種類などは、もちろん家づくりにおいては大事な選択ですが、枝葉の部分(各論)です。

 

住宅会社だって、それぞれのスタンスがあってその仕様を選んでいるわけです。みんな違ってみんないい、と言うわけではありませんが、それなりの理由があって、その仕様にしているケースがほとんどです。(と言いつつ、そこまで検証せずにその仕様にしている住宅会社も一定数存在していることには事実ですし、そこは注意が必要なのですが…)

 

まずお客さまに一番に考えてほしいのは「将来、建てた家でどんなふうに暮らしたいか」(総論)という部分。まずはそこをよく考えてから「だったら家族でこんな家に住みたいよね」とまず住みたい家のイメージをご家族で共有して、そしてそのご要望に応えられる仕様やプランニング、そしてデザインができる住宅会社を選ぶべきだと、そう感じます。

 

そもそも仕様や設計手法、性能などは、本来プロに任せるべきで、お客さまが心配することではないのです。嘆かわしいことに、それをちゃんと、お客さまにご納得していただける説明が出来ない我々プロの側にも問題はあるのですが、いずれにせよ、まず考える事は「どう暮らしていきたいか」。それが一番最初であるということを、ここではお伝えしておきたいと思います。間違っても、第一種換気と第三種換気はどちらがいいとか、断熱材の種類は何がいいとかではありません。

 

みんな間違えてしまう、コストの選択

 

また、「コストは抑えたいけど、いい家がほしい!」

 

と考えて、結局施工会社を決められないお客さまも一定数いらっしゃるように思います。気持ちは分かります。誰しも余計なお金は払いたくないものですよね。

 

高性能な家づくりを勉強して、ご自分なりの理想の仕様を思い描かれるのですが、住宅会社にその仕様を伝えると想像以上に高くなり、結局、その仕様(あくまで素材のみの仕様で、施工精度は度外視)でよりコストがかからない住宅会社を探してさまようタイプの方です。

 

弊社の家は、お施主さまが末長く住み続けられるように優良な素材づかいや設計をしています。いわゆるローコストとは異なり、初期の建築コストはそれなりにかかります。

 

だからこそ、と言うわけではないのですが、お客さまが将来的にも住宅ローン破綻することがないよう、具体的な作業に入る前に必ず家づくりにかけられるお金をきちんと試算する「ライフプラン」をすべてのお客さまに実施しています。

 

計算に迷う部分はあえて不利な選択をするなど、厳しく試算して家づくりの予算を設定しているので、かなり正確に、家づくりにかけられる費用を算出できるのですが、予算的にも問題なく高性能な住宅が建てられると分かっても「なんとなく怖い」と心配になって予算を自ら抑え、見た目の仕様が同レベルで、より安価な住宅会社に依頼して住宅を建ててしまう…。そんな方も多いです。

 

金額ベースで考えすぎて、結果的に見た目の仕様が同じような住宅会社と契約し、かなり早い段階で後悔しているお客さまも何人もいらっしゃいました。しかしそうなってしまうと、弊社でお手伝いできることは残念ながら全くありません。

 

誤解のないようお伝えしますが、これは「出せないものを出せ」という話ではないのです。出せるのに出さないと、結果的に損をするということなのですが、そのことに気づいていない方が多いのです。(あるいは頭では分かっていても、その選択ができないということなのかもしれません)

 

前回のブログでも少しお伝えしていますが、いいもの(建材や素材)は、一般的な素材と比べますと金額は高いです。世の中に、安くていいものはありません。ただ、高くてもいいものは長く使えるのです。だから結果的に安くなるという事になります。

 

「安物買いの銭失い」。日本にも、昔からこんな言葉がありますよね。

 

こと、家を建てる時に、この言葉に当てはまってほしくないのです。これは何も弊社が高いものを使っていただいて儲けたいから言っているわけではありません。優れた建材や素材をつくるためには手間ひまがかけられているから、それだけ製造コストが高いというだけの話です。だからこそ、高い性能を発揮できるわけです。

 

どう暮らしたいかを明確にした上で、ライフプランで家づくりにかけられる費用を算出し、その予算と、高性能住宅にかかるコストがマッチしたら、その家を建てるだけでよいのです。

 

家づくりにはさまざまな考え方があり、そのすべては一長一短です。正解はありませんし、家づくりが成功したかどうかも、その人の考え方で変わります。

 

いろいろなプロが、いろいろなことを言うから、迷ってしまうのはわかります。しかし、ご自身が住まわれる家ですから、最終的には自分で決めるしかありません。

 

間違っても、スタッフさんの対応がよかったから(もちろん対応がいいに越したことはありません)とか、他の会社に比べて安かった、とか、ちょっと不安だけどプランとか見積もりとかやってもらったし、とか、そんな理由で住宅会社を決めてはいけません。あなたやご家族が、ずっと快適に、健やかに、安心して暮らせるかどうか。そういう家をこの会社は建ててくれるのか、本当に信頼できるか、そういう基準で判断してください。

 

当たり前ですが、我々つくり手側は、あなたが決断できる情報提供をしていく必要がありますね。ですが最終決断をするのは、どこまでいっても、あなたです。

 

最近流行している住宅会社のマッチングサービスだって、「あなたにぴったりの住宅会社を紹介します」と言ったって、その仕組みを知ったら、正しい情報提供をしてくれているわけではないと言うことがわかります。(このことについてはまた後日ブログでアップ出来たらと思います)

 

何度も言いますが、施工会社は人に決めてもらうものではありません。最終的に決断するのはあなた自身です。そして我々つくり手は、あなたが決断するに足る情報と説明をするのが使命です。お互いそれが、これからの時代の家づくりに必要なスキルではないかと、そう思います。

 

それでは、また。

 

マルベリーハウス
桑原 人彦