Column 豊かさを彩るフォレストガーデン

2020.02.03

味わいを増したモデルハウスMulberry House

味わいを増したモデルハウスMulberry House

2015年9月のオープンから4年以上が経過したモデルハウスMulberry Houseマルベリーハウス)」。
新築のときから「いつからここにあった?」と思われるくらい周りにしっくり溶け込んだ家でした。
そんなモデルハウスをあらためて見ると、年月を経て味わいを増してきていることに気付きます。

 

ウォールナットの床は色が少しだけ薄くなりました
木材の色は歳月とともに濃くなっていくものですが、モデルハウス「マルベリーハウス」の床に使われているウォールナットは違います。
ウォールナットは皆さんがご存知の通り、はじめはダークな茶色です。それが使っていくうちに少しずつマイルドな色になっていきます。
これはウォールナットが紫外線を吸収し、内部に含まれるタンニンが酸化するためです。
さらに年数が経てば、木目がよく見えるくらいの茶色にまで変化していくはずです。

 

 

ブラックチェリーの家具にはツヤが
なんだか味が出てきたな…とうれしいのが、家具です。
いつも使っている家具の変化は気付きにくいものですが、カタログ写真と比べてみると、テーブルなどの色が明らかに濃くなっていることがわかります。
新品のときはナチュラルな色でしたが、使い込むうちに人の手足の脂にも影響されてツヤが出てきました。
長い年月が趣の深さに変わる、まさに経年美化の楽しみです。

 

木の“動き”は生活に差し支えない程度
モデルハウス「マルベリーハウス」には、自然の木が持つしなやかさや粘りを残しながら十分に天然乾燥させた木材を使っています。これらの無垢材は湿気を吸ったり吐いたりするとき、膨張したり収縮したりします。
この現象はわずかな木の反りや曲がりとなり、「木が動く」と表現されます。
動くと言っても、微細なひびや割れが見られる程度です。強度に問題がないことはもちろん、日常生活に差し支えることもありません。

 

木製の塀が落ち着いた雰囲気になってきました
少しずつアンティークな感じに近づいてきた? と思うのが、モデルハウス「マルベリーハウス」を囲む塀です。
オイル系の塗装を施した新築のときもよかったのですが、4年にわたって風雨にさらされた結果、周りの植物たちとよく馴染んできました。
もしウレタン系の塗料を使っていたなら、塗料が剥げたり膨らんだりして、ここまで落ち着いた雰囲気にならなかったのではないでしょうか。

 

おとなしいクレマチスが4年目に開花
塀との相性が良いのが、シルホサ系クレマチス。白やアイボリーホワイトの花を下向きに咲かせる大人しい印象の品種で、花の後につく白い果球が木製の塀に映えます。
このシルホサは比較的強い品種と言われていますが、モデルハウス「マルベリーハウス」ができてから3年間はなかなか花をつけてくれず、1度に数個が開花すればよい方でした。ちょうど日光が入りにくい位置だったことが影響したかもしれません。
それでも、「もうちょっとかかるのかな~」と思って待っていたところ、4年目でドラマチックな展開に。綺麗な花をたくさん見せてくれました。

 

マルベリーガーデンでは植物たちがせめぎ合っています
オープンから4年の今、植物たちのエネルギーを感じられるのが、モデルハウス「マルベリーハウス」にあるマルベリーガーデンです。
「このハーブはここで、花をつける植物はこっちで…」と、庭づくりを始めたときに思い描いたデザインの通りにはなっていません。想定していなかった植物たちの勢力争い、自然淘汰が進むにつれて、だんだんとマルベリーガーデンのカタチが見えてきました。

 

スギナさえ生えなかった北側の土
その中でも元気が出てきたのが、地面を覆うグランドカバープランツ地被植物)と呼ばれる植物たちです。
特にモデルハウス「マルベリーハウス」の北側では大きな変化が見られます。北側は日差しが少なく、土も悪かったのか、最初はスギナさえ生えないような環境でした。
そこで、繁殖力が強いと言われている植物をいろいろ試してみました。葉の模様がおもしろいアイビー、緑のカーペットとして使われることが多いリピア、白やピンクの丸い花を咲かせるクリーピングタイム、枝が細くて丈夫なワイヤープランツなどです。それでも広がっていく様子がなく、「土を入れ替えないと厳しいのかな」と考えていました。

 

待ちきれず、焦っていました
いま振り返ると、けっこう焦っていたと思います。植物たちが伸びるのを待ちきれず、「この子(植物)は強いよ」という話を聞くと植えてみて、だめだったら別の植物を植え…という繰り返しで、かなりの初期投資をしました。

 

グランドカバープランツが広がりはじめた3年目
植物たちの勢いがよくなったのは3年目くらいからでした。リピア、クリーピングタイム、ワイヤープランツなどが力強く広がり始めました。
そうなると、もう弱肉強食です。本来はとても力のある植物たちを植え過ぎてしまった状態なので、互いに負けまいと対抗して陣取りを始めました。
私たちは特に手を加えることなく、密集している場所の風通しをよくしてあげるくらいで、どんどん地面が覆われていきます。
今、モデルハウス「マルベリーハウス」の北側は本当に豊かなグラウンドカバーになっています。

 

その土地に合う植物は、強い
その土地には、その土地の植生があります。例えば、林や森がない状態から最初に生えてくるパイオニアプランツ先駆植物)は、地域によって違います。
マルベリーガーデンのように始めから庭をつくるときにも、そこに合う植物たちは必ずいるはずです。そのような植物は、多少の環境の変化では負けない強さを持っています。
大切なのは、その植物たちが根付くまで、私たちが待つこと。「ああしたい、こうしたい」と頭で考えたプランにこだわらず、自然の淘汰を見守ることだと思います。