Column 豊かさを彩るフォレストガーデン

2019.05.16

IoT住宅は便利だけど

IoT住宅は便利だけど

IoT住宅は暮らしを便利にします。
でも、それだけで人は幸せになれません。
デジタル化にはよい面がたくさんありますが、それによって失われるものもあるのでは?
今回は、そういうお話です。

 
IoT住宅とは?
IoT(Internet of Things)は「モノのインターネット」と表現されます。パソコンやスマホに限らず、あらゆるモノにインターネットとつながる機能を持たせることによって、自動制御や遠隔操作を可能にしようという考え方です。
このIoTが実現された住宅では、Amazon EchoやGoogle Homeなどのスマートスピーカーを使って住宅設備や家電を操作したり、離れた場所から家族に声掛けをしたりできるというわけです。
住宅内のIoT機器を統合管理するプラットフォームのタッチパネルや音声操作を使って、照明やシャッター、家電をまとめて操作する場面を見たことがあるかもしれません。

窓やドアの施錠忘れを防いでくれたり、家の中の異常な動きや音を感知したときにスマホへ通知してれたりと、防犯面でも役立ちそうです。

さらに、自宅で介護をしている人の負担減や、介護を必要としている人の安全など、これからの私たちが避けて通れない問題の解決にもつながりそうですね。

 

人間の機能が退化しないか?
便利なテクノロジーは、どんどん取り入れればよいと思います。
でも、私が思うのは、それによって人間の機能が退化してしまわないか? ということです。
例えば、トイレに座るだけで健康チェックをしてくれる商品が以前からあり、現在も改良が進んでいます。病気を早期発見し、健康で暮らせる時間を長くすることを目指したすばらしい取り組みだと思います。
しかし、そのような便利さに慣れてしまうと、自分の体調に気付く感覚が衰えないだろうか? と思ってしまいます。人間らしい生活とは一体なんなのか、考えさせられます。

 

アナログにもよいところが
デジタル技術が発展し、アナログ技術に取って代わるようになっても、アナログはなかなかなくなりません。不思議なもので、アナログならではの心地よさというものがあるのでしょう。
1つ例を挙げると、音楽のレコードはいまだに愛好されていますし、レコードの針をつくっている会社もあります。
LPレコードの曲順にはストーリーがあり、それをAmazonのPrime MusicやApple Musicを使ってシャッフル再生してしまっては、意味がありません。生演奏のコンサートで観客が曲順を勝手に入れ替えてしまうようなものです。
LPレコードのジャケ写にしても、大切な表現手段です。

デジタルはよいのですが、アナログのそういうよさも見逃さない感性を持ちたいと思います。

 

心地よさを感じる力
季節によって、1日の中の時間帯によって、家に差し込む光の変化を感じられます。
全自動コーヒーメーカーではなく、あえて手回しミルで豆を挽いて朝が始まる暮らしがあります。
ロボット掃除機は可処分時間を増やしてくれる発明ですが、無心になって手を動かして掃除をすることにも価値があります。
そういう1つひとつのことに、心地よさを感じられるのが、人間だと思います。

 

自分の頭で考える
先ほど述べた健康チェックトイレもそうですが、家族の見守りや判断に役立つテクノロジーが増えてくるでしょう。
しかし、人間が持つ観察力判断力も大切にしたいものです。
子どもが熱を出したとき、どういう状態にあるのかを観察できれば、安心・安全につながります。ぐったりしているけれど目に生気はあるとか、熱がないのに機嫌が悪いとか、そういった状態を見極めて自分で考えられることが大事です。

 

子育てに関わることでもう1つ挙げるなら、室温の管理です。
いつも快適な室温で暮らせるというのが、高性能住宅のよいところ。
でも、子どもの成長のためには、ちゃんと汗をかかせることが必要。心地よい室内だけでなく、外で思い切り遊ばせることが大切なのは、言うまでもありません。
汗をかく機能は幼少期のうちに備わると言われます。体温調節を行う「能動汗腺」は、暑い場所で育つと発達しやすく、寒い場所で育つと発達しにくくなります。能動汗腺が発達しないと、熱を体内から逃がしにくくなり、熱中症の恐れが高まるという指摘もあります。

 

豊かな心が育つ家
はじめにも述べましたが、テクノロジーは暮らしを便利にするものの、それだけが人を幸せにするとは思いません。
Mulberry House(マルベリーハウス)」桑原建設は、ご家族がいかに健康でいられるか、豊かな心を持った人が育つかを考えながら、暮らしのスタイルをご提案しています。

 

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《プロフィール》
代表取締役 一級建築士
桑原 人彦
江戸時代から続く大工の家系に生まれ、設計事務所での勤務経験を経て、父親から桑原建設を継承。創業以来50年以上に渡って約700棟の家づくりに携わった経験を生かし、打ち合わせから設計、施工監理までワンストップで対応。(一社)静岡木の家ネットワークの代表理事も務める。