Column | 豊かさを彩るフォレストガーデン |
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2019.04.25
■文系で建築士になった人もたくさんいます
建築士=理系
と思われています。
たしかに建築士は設計や構造計算、性能値など、テクニカルなことがわかっていなければ、話にならない職業です。
だから「建築士になりたい」と希望する若い人に対して、学校の先生や周りの大人は理系に進むようにアドバイスすることが多いでしょう。
しかし、私は建築士だからと言って、理系でなければダメということはないと思います。
実は、文系から建築士になった人もたくさんいます。
■家を設計するときに大切なのは“文系の素養”です
家を設計するには、特にご家族で暮らす木造注文住宅を設計するためには、文系の素養が大切になってきます。
例えば、家を建てたい方たちのお話を聞き、コミュニケーションを取る必要があります。そこで得られた情報や感触を基に、ご家族が暮らしていくストーリーを考えていきます。もう少し具体的に言えば、ご家族にこれからの生活を想像してもらい、それを会話の中で引き出し、図面化するということです。
ここで建築士に求められるのは、専門知識を土台に「どうすればご家族が豊かに暮らせるのか」を考えることです。住宅の性能といった数字だけでなく、もっと広い視野で考える文系的な捉え方が必要です。
■理系の人は数学的な答を求めてしまいますが…
数学はズバッと答が出ます。そこが好きという方も多いでしょう。
一方、文系ではそれほどハッキリとした答が出ません。例えば、小説に描かれた人間や社会がどのようなものであるかを尋ねても、読者によって答が違うはずです。
家づくりもそうです。それぞれの家族にそれぞれの理想があります。しかも、その理想もハッキリとカタチになっているわけではありません。
■建築士の仕事に答はありません
1つの家に異なる理想を反映させなければならないケースもあります。わかりやすい例を挙げれば、二世帯住宅です。親世帯と子世帯が抱えるそれぞれの思いをじっくりと聴き出し、考え方の違いを理解した上で、プランをまとめていきます。
もちろん、1つの答が見つかるはずがありません。問題解決のアプローチも1つではありません。そんなときに私ができるのは、自分が二世帯住宅に住んだ経験を踏まえるなどして「こういう事例もありますが、○○さんはちょっと違いますね。どうしましょうか?」というコミュニケーションを重ねることです。
無理やり答を出そうとすると、歪みが生じてしまいます。答がないところに、答らしきものをそれとなく示していくのが、建築士の仕事だと私は考えています。
■性能は達成して当たり前
こうして家づくりのプランをまとめ上げるときに、そのベース・背景となるのがテクニカルな知識・経験です。だから、温熱環境や耐震性を高いレベルで達成するのは建築のプロとして当たり前の話であって、お客さまとお話しするときに前面に押し出すものではありません。
もちろん、お客さまからお尋ねがあれば、性能についてきっちりとご説明します。しかし、一番大切なのはご家族で豊かに幸せに長く暮らしていくストーリーを編み出すことです。
■Mulberry Houseの家には私の思いも入っています
このように家づくりを進めていると、つくり手の思いがどうしても設計に入ってきます。つまり、Mulberry House(マルベリーハウス)の家にはお客さまの思いだけでなく私の思想も反映されているというわけです。だから、「家はどこに建ててもらっても同じ」ということは、まったくありません。ぜひ、「Mulberry House(マルベリーハウス)」桑原建設のモデルハウスをご覧になったり、気になったところを私に尋ねていただいたりして、ご自分のライフスタイルや人生観と比べてみてください。
《プロフィール》
代表取締役 一級建築士
桑原 人彦
江戸時代から続く大工の家系に生まれ、設計事務所での勤務経験を経て、父親から桑原建設を継承。創業以来50年以上に渡って約700棟の家づくりに携わった経験を生かし、打ち合わせから設計、施工監理までワンストップで対応。(一社)静岡木の家ネットワークの代表理事も務める。