Column 豊かさを彩るフォレストガーデン

2020.05.18

何が正しくて、何が間違っているか、正確な情報を見分ける難しさ。

何が正しくて、何が間違っているか、正確な情報を見分ける難しさ。

新型コロナウイルスの感染拡大で長く自粛生活が続く昨今、徐々に自粛疲れが出てきて、なにか社会が少し殺伐としているように感じます。

私たち一人一人が他者を許容する心を持ちたいですね。みんながそう思うことで少しは殺伐とした空気も和らぐと思います。ただ、今は早く収束することを願うばかりです。

そんな中で、住宅業界では、この2か月でオンラインでの打ち合わせ、オンライン見学会、Youtube動画の配信、インスタライブなどネット環境を利用した対応が一気に進みました。お客様と直接会うことが困難になったことで、お客さまと対面せずに情報をお伝えする方法を各社が対応を模索している状況です。

今までもブログ、SNS等での情報の配信はありましたが、そこに動画が入り込み、より作り込んだものが多く配信されるようになりました。

ちなみに、そのような状況下で以下のYoutubeが2月に配信されました。

 

 

みなさんはこの動画見てどう思われるでしょうか?

私の感想としては、嘘は言っていないけれど正しい情報でもないというところです。

この動画の内容としては、

グラスウール、ロックウールなどの繊維系(この動画では一般の人にもわかりやすく綿状断熱材と言っています。)の断熱材が湿気を吸い、垂れ下がってしまうと、断熱効果がなくなり建物の構造材を腐らせる

ということを、実際に垂れ下がった断熱材、カビが発生している画像を使って説明しています。

このこと自体は間違ってはいません。事実、繊維系の断熱材の弱点は湿気に弱いところです。

ただ、ここで大事なのは、なぜ繊維系の断熱材が湿気を吸ってしまうような状況を作り出してしまっているかという事です。

誤解のないように説明しますがグラスウール、ロックウールに代表される繊維系断熱材は、今も昔も一番使われている断熱材です。しかも、弊社以上に断熱性能の高い、いわゆる高気密高断熱の家を建てられている工務店さんが使っている断熱材も、間違いなく高性能な繊維系断熱材が一番多く使われております。繊維系断熱材は断熱材としての性能もコストパフォーマンスも非常に優れた建材です。

話をもとに戻しますが、プロの私たち側からみたら、まずグラスウールが湿気を吸ってしまう状況を作ってしまったことがダメなわけです。要は施工が悪いのです。

まずは室内側にしっかりと防湿層を施工して、壁内に湿気が入らないようにすること。そして、万が一、湿気が壁内に侵入した場合には外壁側の通気層から湿気を逃がすというのが断熱、防湿工事の基本中の基本です。

施工が悪いから断熱材が湿気を吸って垂れ下がっているのにそのことに触れず、ことさらグラスウールを貶めるように説明するこの動画はある意味で悪質です。この動画で言っているロジックは30年前くらいの、まだ断熱材施工の方法が確立されていなかった頃の話です。プロが観たら笑っちゃうくらいのレベルのものです。しかしそれは私たちがプロだからわかることです。

このようにしっかりとつくり込んだ動画を一般の方が観たら繊維系断熱材は悪いものだと思い込むでしょう。この動画は一般の方をミスリードしているのです。すでに18万回以上視聴されてるようですし、たくさんのビジネスパートナーが全国にいるフランチャイズ店が作っている動画ですから影響が少ないとは言えません。これは問題です。

加盟している会社の方々であっても、この動画を観たらとても残念に思うのではないでしょうか。

このように日々、SNSやブログ、Youtubeのような動画配信ツールなどで建築にまつわる情報がたくさん出回っています。中にはプロではない素人に毛が生えたくらいの知識の人が挙げている情報が多くの人達に見られていて、さも正しいような感じで出回ってるものもたくさんあります。もちろん真面目に正しい情報を上げているプロの方たちもたくさんいます。

今の世の中、何が正しくて何が間違っているか判断が非常に難しい時代です。だからこそ私たちプロがもっと正しい情報を発信していかなければいけないのではないかと痛感しています。もちろんプロではあってもすべての事に精通しているわけではありません。

私たちも日々研鑽を積み、アンテナを常に高く持ち、新しい情報にも敏感になって一つでも多く正しい情報、知識をお客様に伝えられるように努力していかなければいけないと思います。